社会保険の適用拡大 ― パート・アルバイトは、いつから加入対象になる?【社労士が解説】

こんにちは。こころ社労士事務所の香川です。
「うちで働いてくれているパートさん、社会保険に入れないといけない対象なんでしょうか?」
「適用拡大って聞くけど、うちの規模はまだ関係ないですよね?」
このところ、こうしたご相談をいただくことが増えてきました。
社会保険の「適用拡大」は、ここ数年で段階的に進んでおり、これまで対象外だった会社も、順次対象になっていく流れにあります。
「今は対象外だから、まだ考えなくても大丈夫」
そう思っている会社も、数年後には対応が必要になるかもしれません。
今回は、パート・アルバイトの方が社会保険の加入対象となる条件と、今後の適用拡大のスケジュールについて、分かりやすく整理してお伝えします。

まず確認したい「4分の3基準」

社会保険の適用拡大についてお話しする前に、まず押さえていただきたいことがあります。

それは、会社の規模に関係なく、社会保険の加入対象となるパート・アルバイトの方もいるということです。

原則として、パート・アルバイトなどの方でも、次の両方を満たす場合は、社会保険の加入対象になります。

  • 週の所定労働時間が、通常の労働者の4分の3以上
  • 月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上

これを「4分の3基準」といいます。

例えば、正社員の週の所定労働時間が40時間、月の所定労働日数が20日の会社であれば、週30時間以上、月15日以上の両方を満たすパートの方は、原則として加入対象になります。

つまり、従業員が10人の会社であっても、この基準を満たせば社会保険への加入が必要です。

「うちは小さな会社だから、パートさんは社会保険に入らなくてもよい」というわけではありません。

まずは、この点を確認しておきましょう。

社会保険の適用拡大で、誰が加入対象になるの?

今回の適用拡大で対象となるのは、先ほどの4分の3基準を満たさない、比較的労働時間の短いパート・アルバイトの方です。

適用拡大の対象となる企業では、原則として、次の3つの要件を満たす短時間労働者が社会保険の加入対象になります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない

ここでいう社会保険とは、健康保険と厚生年金保険のことです。

なお、これらの要件は、適用拡大の対象企業で働く短時間労働者についてのものです。すべての会社のパート・アルバイトに、一律に適用されるわけではありません。

「学生は対象外」にも例外があります

「学生アルバイトだから、社会保険は関係ない」

そう思われることもありますが、学生であっても加入対象となる場合があります。

例えば、次のような方です。

  • 卒業後に就職する予定の事業所で、卒業前から勤務している方など、一定の要件に該当する卒業予定者
  • 休学中の方
  • 定時制・通信制などの一定の学生

学生というだけで判断せず、勤務状況や就学状況を確認することが大切です。

月額8.8万円の賃金要件は撤廃されました

以前は、短時間労働者が社会保険に加入する要件として、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という条件がありました。

しかし、この賃金要件は、2026年10月に撤廃されました。

そのため、現在は、原則として先ほどの3つの要件を満たすかどうかで判断することになります。

ただし、最低賃金の減額特例許可を受けている方など、一部に例外があります。

自社は対象? ―「企業規模要件」を確認しましょう

次に確認したいのが、会社の規模です。

2026年10月現在、社会保険の適用拡大は、原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等を対象としています。

ここで注意したいのが、従業員の総数で判断するわけではないということです。

企業規模の判定に用いる人数は、原則として次の方を合計します。

  • フルタイムの厚生年金保険の被保険者
  • 週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が、通常の労働者の4分の3以上である厚生年金保険の被保険者

例えば、正社員が30人、4分の3基準を満たすパートが10人、週20時間勤務のパートが20人いる会社の場合です。

従業員の総数は60人ですが、企業規模の判定に用いる人数は40人となります。

この場合、人数だけで見れば、現在の51人以上という企業規模要件には該当しません。

また、法人の場合は、同一法人全体の人数を合算して判定します。

本社と支店がある場合でも、事業所ごとではなく、法人全体で確認する必要があります。

なお、企業規模の判定には一定のルールがあり、一時点の人数だけで判断するものではありません。

また、51人未満の企業であっても、労使合意により適用拡大の対象となる制度があります。

【重要】企業規模要件は、段階的に縮小されます

ここが、今回いちばんお伝えしたいポイントです。

2025年に成立した年金制度改正法により、企業規模要件は2027年10月以降、段階的に引き下げられることになっています。

今後のスケジュールは、次のとおりです。

適用開始時期 対象となる企業規模
2026年10月現在 厚生年金被保険者数51人以上
2027年10月 36人以上
2029年10月 21人以上
2032年10月 11人以上
2035年10月 企業規模要件を撤廃

つまり、最終的には企業規模による制限がなくなり、規模の小さな会社でも、要件を満たす短時間労働者は社会保険の加入対象になる方向で進んでいます。

「うちはまだ51人に届かないから関係ない」

そう思っている会社も、数年後には対象になる可能性があります。

「まだ先の話」と考えるのではなく、自社がいつ対象になるのかを、今のうちに把握しておくことが大切です。

今から確認しておきたい3つのこと

では、会社として今から何を準備しておけばよいのでしょうか。

私は、まず次の3つを確認することをおすすめしています。

① 自社がいつ対象になるのかを確認する

まずは、現在の厚生年金保険の被保険者数を確認しましょう。

そのうえで、2027年、2029年、2032年と段階的に進む適用拡大のスケジュールと照らし合わせます。

対象となる時期が分かれば、準備の計画も立てやすくなります。

② 加入対象になりそうなパート・アルバイトを確認する

次に、パート・アルバイトの方の働き方を整理します。

週の所定労働時間や雇用契約の内容を確認し、適用拡大によって新たに加入対象となる方が何人いるのかを把握しておきましょう。

③ 保険料負担と従業員への説明を準備する

社会保険の加入対象者が増えれば、会社の保険料負担も増えます。

そのため、事前にどのくらいの負担が生じるのかを試算しておくことが大切です。

一方、従業員の方にとっては、社会保険への加入によって手取り額が減る場合もあります。

だからこそ、保険料の負担だけでなく、将来の年金や医療保障がどのように変わるのかについても、丁寧に説明できるようにしておきたいところです。

私が事業主のみなさまにお伝えしていること

適用拡大のご相談を受けていて私が感じるのは、どうしても「会社の社会保険料負担が増える」という点に目が向きやすい、ということです。

確かに、会社にとって保険料の負担が増えることは、大きな問題です。

特に、人件費が上昇しているなかで、さらに社会保険料の負担が増えることに不安を感じる経営者の方も多いと思います。

その現実は、決して軽く考えられるものではありません。

ですが、私は、この変化を「働く人に選ばれる会社になる機会」としても捉えていただきたい、とお伝えしています。

社会保険に加入することで、働く方は将来の年金が増えたり、病気やけがで働けなくなったときの保障が充実したりします。

もちろん、社会保険に加入することで手取り額が減ることを気にされる方もいらっしゃいます。

だからこそ、会社の都合だけでなく、働く方が何を大切にしているのかにも耳を傾けることが必要だと思うのです。

そして、もう一つお伝えしたいことがあります。

今回の適用拡大は、対象となる時期があらかじめ決まっています。

つまり、会社には準備する時間がある、ということです。

対象になってから慌てて対応するのではなく、今のうちから働き方や処遇について話し合っておく。

社会保険料の負担を見据えながら、従業員の方にも制度を理解していただき、安心して働き続けられる環境を整えていく。

その準備こそが、会社と働く方の双方を守ることにつながると、私は考えています。

まとめ

今回のポイントを整理します。

  • 4分の3基準を満たすパート・アルバイトは、企業規模に関係なく原則として社会保険の加入対象になる
  • 適用拡大の対象企業では、原則として①週20時間以上 ②2か月超の雇用見込み ③学生でないという要件を満たす短時間労働者が加入対象になる
  • 学生でも、卒業予定者・休学中・定時制等は対象となる場合がある
  • 月額8.8万円の賃金要件は2026年10月に撤廃された(一部例外あり)
  • 2026年10月現在の企業規模要件は、厚生年金被保険者数51人以上
  • 企業規模要件は、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に撤廃と段階的に縮小される
  • 今から、対象となる時期・加入対象者・保険料負担を確認しておくことが大切

社会保険の適用拡大への準備、お手伝いします

「うちはいつから適用拡大の対象になる?」

「対象になるパートさんが何人いるのか、確認しておきたい」

「社会保険料の負担が増える前に、準備を進めておきたい」

そんなお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

こころ社労士事務所では、社会保険の適用拡大への対応はもちろん、日々の労務相談や社会保険の手続きなど、会社の実情に合わせたサポートを行っています。

「困ったときに、気軽に相談できる社労士がいる」

それだけでも、経営者の方にとって大きな安心につながると思います。

継続的な労務管理のサポートをお考えの方は、ぜひ顧問契約のご案内をご覧ください。


顧問契約のご案内はこちら

また、「まずは自社の状況について相談してみたい」という方も歓迎しています。

小さな疑問でも構いません。お気軽にお問い合わせください。


お問い合わせ・ご相談はこちら

社会保険の適用拡大は、会社にとって負担が増える制度であると同時に、働く方の安心を支える制度でもあります。
会社の経営と、そこで働く一人ひとりの暮らし。
その両方を大切にしながら、無理のない準備を進めていきましょう。
次回の「社労士が解説」も、どうぞお楽しみに。


参考:日本年金機構「社会保険適用拡大」関連情報/令和7年年金制度改正法

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
茨木商工会議所専門家相談事業 専門家相談員
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

関連記事

RELATED POST

CALENDAR

2026年11月
月 火 水 木 金 土 日
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  
PAGE TOP
MENU
お問合せ

TEL:072-646-8954

(月 - 金 9:00 - 17:00)