【社労士が解説】一度決めたシフト、会社の都合で減らせる? ― 確定したシフトと休業手当の話

こんにちは。こころ社労士事務所の香川です。
「思ったより暇な日ができてしまって……シフトを減らしたいんだけど、一度決めたシフトって変えられるのかな?」
飲食店や小売業など、シフト制を採用している会社さまから、よくいただくご相談です。
結論からお伝えすると、
会社として確定したシフトを、会社の都合だけで一方的に減らすことは、原則としてできません。
もし会社都合で勤務日や勤務時間を減らした場合には、休業手当の支払いが必要になったり、場合によっては本来支払われるはずだった賃金を請求されたりする可能性があります。
今回は、「シフトが確定した後」の取扱いについて、分かりやすく整理してみたいと思います。

まず確認したい ― 「シフトはいつ確定するのか」

シフト制といっても、その運用は会社によってさまざまです。
例えば、
① 従業員が提出した希望を、そのまま勤務予定として扱う会社
従業員が提出したシフト希望が、そのまま勤務予定になる運用です。
② 会社が調整してから勤務予定を決める会社
従業員の希望をもとに、会社が人数や時間を調整し、最終的な勤務予定を決定する運用です。
このように運用は異なりますが、大切なのは「どちらの運用か」ではありません。
ポイントは、
「会社としてシフトが確定したのは、いつなのか」
ということです。
会社がまだ調整している段階であれば変更できます。
しかし、一度シフトが確定した後は、その勤務日や勤務時間は労働契約の内容となります。

なぜ、一方的に減らせないのか

労働条件は、本来、使用者と労働者の合意によって決まるものです。
そのため、一度確定したシフトを会社の都合だけで変更することは、労働契約の内容を一方的に変更することになります。
「まだ働いていない日だから変更しても大丈夫」
と思われがちですが、そうではありません。
シフトが確定した時点で、その日は会社と従業員との約束になっています。
もちろん、従業員が同意して変更するのであれば問題ありません。
しかし、会社だけの判断で勤務日や勤務時間を減らすことは、原則として認められません。

シフトを減らした場合、会社にはどんな負担が生じる?

会社都合で確定後のシフトを変更した場合、考えなければならないのは「労働基準法上の問題」と「民法上の問題」の2つです。
① 休業手当(平均賃金の60%以上)
会社都合で、確定していたシフトの日や時間を休ませた場合には、労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。
これは法律が定める最低限の保障です。
「勤務しなかったから賃金は発生しない」ということにはなりません。
② 賃金の全額(100%)を請求される可能性も
さらに注意したいのは、休業手当とは別に、民法上の問題になるケースです。
会社に合理的な理由がないにもかかわらず、一方的にシフトを削減した場合には、休業手当だけではなく、本来支払われるはずだった賃金全額を請求される可能性があります。
「60%払えば十分」と考えてしまうと、後から残りの賃金についてトラブルになることもあります。

「60%」と「100%」は何が違う?

少し整理しておきましょう。

  • 休業手当(平均賃金の60%以上)
    労働基準法が定める最低限の保障です。
  • 賃金全額(100%)
    会社の責任によって働けなかったと判断された場合に、民法上請求される可能性があるものです。
    この2つは根拠となる法律が異なります。
    「60%払えば必ず問題がない」というわけではありません。

私が事業主のみなさまにお伝えしていること

こうしたトラブルを防ぐために、私がいちばんおすすめしているのは、シフトに関するルールをあらかじめ明確にしておくことです。
例えば、

  • シフト希望はいつまでに提出するのか
  • 会社はいつシフトを確定するのか
  • 確定後に変更する場合の手続き
  • やむを得ず変更が必要になった場合の対応方法

こうしたルールが決まっているだけで、「言った・言わない」のトラブルは大きく減らせます。
厚生労働省も、「いわゆるシフト制により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」の中で、シフトの決め方や変更のルールをあらかじめ労使で明確にしておくことを求めています。
働く方にとって、シフトは単なる勤務予定ではありません。
生活設計そのものです。
「今月はこの収入がある」と見込んで生活を組み立てている方も多くいらっしゃいます。
だからこそ、
シフトのルールを整え、変更が必要なときには丁寧に話し合う。
その積み重ねが、従業員との信頼関係を守り、結果として会社を守ることにつながると、私は考えています。

まとめ

今回のポイントを整理します。

  • シフト制でも、会社として確定したシフトは労働契約の内容となる
  • 確定したシフトを会社都合だけで一方的に変更することは、原則としてできない
  • 会社都合で休ませた場合には、平均賃金の60%以上の休業手当が必要になる
  • 合理的な理由なく一方的にシフトを削減した場合には、賃金全額を請求される可能性もある
  • トラブルを防ぐためには、シフトの確定時期や変更ルールをあらかじめ明確にしておくことが大切

「うちのシフトは、いつ確定したことになるんだろう?」
「今の運用で問題ないのか、一度確認してみたい。」
そんな具体的なご相談は、いつでもお気軽にお声がけください。
こころ社労士事務所では、シフトに関するルールづくりや就業規則の整備、日々の労務管理まで、会社の実情に合わせてサポートしています。
次回の「社労士が解説」も、どうぞお楽しみに。

(参考)
厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
茨木商工会議所専門家相談事業 専門家相談員
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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