特別休暇は正社員だけでもいい? ― パートとの待遇差で確認したいポイント【社労士が解説】

こんにちは。こころ社労士事務所の香川です。
「慶弔休暇やリフレッシュ休暇は、正社員だけの制度にしているんですが……これって問題ないですよね?」
「パートさんにも、同じように休暇を付与しないといけないのでしょうか?」
就業規則を見直すなかで、こうしたご相談をいただくことがあります。
特別休暇は、法律で義務づけられている年次有給休暇とは異なり、会社が独自に設ける休暇制度です。
そのため、「会社が自由に決められるのだから、正社員だけを対象にしても問題ない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、結論からお伝えすると、「パートだから」「契約社員だから」という理由だけで、一律に特別休暇の対象外とすることは、不合理な待遇差となる可能性があります。
もちろん、正社員とパート・契約社員のすべての待遇を同じにしなければならない、ということではありません。
大切なのは、その休暇が何のために設けられているのか、そして待遇に差を設ける理由があるのかということです。
今回は、特別休暇の取扱いについて、会社が確認しておきたいポイントを分かりやすく整理します。

まず押さえたい「同一労働同一賃金」の考え方

ここで関係してくるのが、いわゆる「同一労働同一賃金」のルールです。
パートタイム・有期雇用労働法では、通常の労働者(一般的には正社員)と、短時間・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることを禁止しています。
そして、この「待遇」には、基本給や賞与、各種手当だけでなく、慶弔休暇やリフレッシュ休暇などの休暇制度も含まれます。
ただし、ここで誤解していただきたくないことがあります。
同一労働同一賃金とは、すべての社員に、まったく同じ待遇を用意しなければならないという制度ではありません。
待遇差が不合理かどうかは、主に次のような事情を踏まえて判断されます。

  • 仕事内容や責任の程度
  • 職務内容や配置の変更の範囲
  • その他の事情

そして、それぞれの待遇の性質や目的に照らして、その違いが適切かどうかを考えます。
つまり、正社員とパートで休暇制度に違いがある場合には、「なぜ、その違いを設けているのか」を説明できることが大切なのです。

判断は「休暇の種類ごと」に

特別休暇といっても、その目的はさまざまです。
結婚や身内の不幸の際に取得する慶弔休暇もあれば、長年の勤務に対する慰労を目的とした休暇もあります。
そのため、特別休暇をひとまとめにして判断するのではなく、休暇の種類ごとに、その目的や性質を確認する必要があります。
厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでも、休暇の種類に応じた考え方が示されています。
順番に見ていきましょう。

① 慶弔休暇 ― 原則として同一の付与が求められます

結婚や身内の不幸などの際に取得する慶弔休暇については、ガイドラインで、通常の労働者と同一の慶弔休暇を短時間・有期雇用労働者にも付与することが求められています。
結婚や身内の不幸といった出来事は、正社員かパートかによって変わるものではありません。
だからこそ、雇用形態だけを理由に休暇の対象から外すことには、慎重な判断が必要なのです。
ただし、勤務日数などによって、取扱いに違いを設けることが認められる場合もあります。
例えば、ガイドラインでは、週2日勤務の短時間労働者について、勤務日の振替による対応を基本とし、振替が困難な場合に慶弔休暇を付与する取扱いが、問題とならない例として示されています。
大切なのは、「パートだから対象外」と決めるのではなく、勤務の実態も踏まえて制度を整えることです。

② 勤続期間に応じた特別休暇 ― 同じ勤続期間なら原則同一に

例えば、勤続5年、10年、20年といった節目に付与する特別休暇があります。
長年会社に貢献してくれたことへの感謝や慰労を目的として設けている会社も多いのではないでしょうか。
こうした勤続期間に応じた法定外休暇について、ガイドラインでは、通常の労働者と同一の勤続期間である短時間・有期雇用労働者にも、同一の休暇を付与することが基本とされています。
例えば、勤続10年の正社員には特別休暇を付与する一方で、同じく勤続10年のパートには一切付与しない場合です。
「正社員ではないから」という理由だけでは、その違いを合理的に説明することは難しいでしょう。
もちろん、個々の待遇差については、休暇の目的や職務内容などを踏まえて判断する必要があります。
ですが、勤続への感謝や慰労を目的とするのであれば、雇用形態だけで対象を区別してよいのか、一度考えてみることが大切です。

③ リフレッシュ休暇 ― 名前ではなく、目的で判断します

リフレッシュ休暇についても、注意が必要です。
ひと口にリフレッシュ休暇といっても、会社によって制度の目的が異なるからです。
例えば、

  • 心身の疲労を回復し、今後も元気に働いてもらうための休暇
  • 一定の勤続年数に達した社員への慰労を目的とした休暇
  • 勤務実績や貢献に対する報償として設ける休暇

などが考えられます。
このように、同じ名称であっても、制度の目的や付与条件は会社によって異なります。
そのため、「リフレッシュ休暇だから正社員だけでよい」「パートには勤務時間に比例した日数を付与すればよい」と、一律に判断することはできません。
例えば、勤続期間に応じて付与する休暇であれば、先ほど説明した勤続期間に応じた法定外休暇の考え方が参考になります。
一方、勤務時間や勤務実績などに応じて付与条件を設ける場合には、その違いが休暇の目的に照らして不合理ではないかを確認する必要があります。
休暇の名称ではなく、何のための制度なのか。
ここを整理することが大切なのです。

「休めるかどうか」だけでなく「有給か無給か」も大切です

もう一つ、就業規則を見直す際に確認していただきたいことがあります。
それは、特別休暇を有給とするのか、無給とするのかという点です。
例えば、次のような制度を設けている会社があったとします。

  • 正社員:慶弔休暇を取得でき、その日は有給
  • パート:慶弔休暇は取得できるが、その日は無給

この場合、休暇を取得できるという点では同じですが、賃金の取扱いには違いがあります。
こうした違いについても、不合理な待遇差となっていないかを確認する必要があります。
「休暇を与えているから問題ない」とは限らないのですね。
特別休暇は、取得できる条件、付与日数、有給・無給の取扱いまで含めて確認することが大切です。

「目的」で結論が変わる、ということ

ここまで見てきて、お気づきかもしれません。
同じ特別休暇でも、その目的によって、求められる取扱いが変わります。
慶弔休暇のように、結婚や身内の不幸といった出来事に対応するための休暇。
勤続期間に応じて、長年の勤務をねぎらうための休暇。
心身の疲労回復や、今後の活躍を支えるための休暇。
それぞれ、会社が制度を設けた理由があるはずです。
だからこそ、「特別休暇は全部正社員だけ」と一律に決めてしまうのではなく、一つひとつの休暇について、目的と取扱いが合っているかを確認することが重要になります。
そして、休暇の目的だけでなく、仕事内容や責任の程度、働き方の違いなども踏まえて、不合理な待遇差になっていないかを判断する必要があります。

私が事業主のみなさまにお伝えしていること

ご相談を受けていて私が感じるのは、必ずしも「パートや契約社員を不利に扱おう」という意図があるわけではない、ということです。
就業規則を作った当時から、特別休暇は正社員だけの制度になっていて、そのまま何年も運用されている。
そんなケースも少なくありません。
ですが、悪意がなかったとしても、不合理な待遇差があれば、法的な問題につながる可能性があります。
そして、私がもう一つ気になるのは、同じ職場で働く仲間の間に、必要以上の壁ができてしまわないかということです。
もちろん、正社員とパートでは、仕事内容や責任、働き方が異なることもあります。
だから、すべてを同じにする必要があるとは思いません。
ただ、その違いが本当に必要なものなのか。
会社として、きちんと説明できるものなのか。
そこは、一度立ち止まって考えていただきたいのです。
私は、就業規則を見直す際に、特別休暇の一つひとつについて、「これは誰のための、何のための休暇なのか」を一緒に確認することをおすすめしています。
特別休暇の見直しは、単に法律に合わせるためだけのものではありません。
同じ会社で働く仲間を、どのように大切にしていくのか。
そんな会社の考え方を、制度として形にする機会でもあると思います。
法律を守ることはもちろんですが、その先にある「誰もが安心して働ける職場づくり」まで、一緒に考えていきたいですね。

まとめ

今回のポイントを整理します。

  • 特別休暇を「非正規だから」という理由だけで一律に対象外とすることは、不合理な待遇差となる可能性がある
  • 判断は、休暇の種類・目的・性質に加え、仕事内容や責任の程度なども踏まえて行う
  • 慶弔休暇は、短時間・有期雇用労働者にも原則として同一の付与が求められる
  • 勤続期間に応じた法定外休暇は、同一の勤続期間であれば、原則として同一の休暇を付与する
  • リフレッシュ休暇は、名称だけで判断せず、制度の目的や付与条件を確認する
  • 特別休暇を取得できるかどうかだけでなく、有給・無給の違いにも注意が必要

「うちの特別休暇、今のままで大丈夫か見てほしい」「就業規則の休暇規定を、一度整理し直したい」そんなご相談がありましたら、どうぞお気軽にお声がけください。
こころ社労士事務所では、就業規則の点検・見直しから、同一労働同一賃金への対応、休暇制度の設計まで、会社の実情に合わせてサポートしています。
詳しくは「顧問契約のご案内(https://sr-kokoro.com/advisory-contract/)」をご覧ください。
制度を整えることは、働く人を大切にする会社づくりの一歩です。
それぞれの会社に合った、納得感のある制度を一緒に考えていきましょう。
次回の「社労士が解説」も、どうぞお楽しみに。

参考:パートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条/短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号)

お問い合わせ:https://sr-kokoro.com/contact-page/

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
茨木商工会議所専門家相談事業 専門家相談員
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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