社労士に聞く?行政の窓口に聞く?~雇用・社会保険のギモン~

会社であれ、個人事業であれ、人を雇うことは本当に大変です。起業当初は自分ひとりで始められる方が多いと思います。事業が大きくなってきて「そろそろ人を雇おうかな?」ということになるでしょう。
ここで気づきます。
雇用のことは全く知らない!
雇用のことは知らなくても事業は始められるのです。大抵の社長は経営に手がいっぱいで、将来の雇用のために労働法を勉強したり、社会保険を勉強する暇はありません。
よって、自分で調べるか、誰かに聞くしかありません。インターネットで調べる方が一番多いでしょうか、真偽の分からない情報もあり不安です。
本題です。
無料の行政窓口(ハローワーク、労働基準監督署、年金事務所等)に問い合わせるか、有料の社労士に相談するか。両者の違いが本記事のテーマです。

行政に聞くメリット

なんといってもお金がかかりません。経営者ですからなるべく費用は抑えたいので、これが最大のメリットでしょう。
次に確実に正しい答えが得られることが挙げられます。行政に就職する試験を受けて合格した人(常勤であれ非常勤であれ)が答えてくれます。万が一その人がわからないときは、別のベテランの方が答えてくれるので安心です。手続きのための用紙ももらえます。

行政に聞くデメリット

では、デメリットは何でしょうか?
一つの問いに対する一つの答えを与えるのが行政の仕事です。それ以上の答えは得られません。
例えばこんなやりとりが考えられます。
社長「社員のパフォーマンスが悪いのですが解雇できますか?」
窓口「解雇は客観的かつ合理的で社会通念上相当でないとできないので難しいです」
こんな難しい言葉ではないでしょうが、このような内容の答えにならざるを得ません。
社長「例えばどんな条件ですか?」
窓口「場合によります。」
こんな冷たくはないでしょうが、それ以上答えようがありません。答えが分かれる問いには行政は不向きです。

社労士に聞くメリット

手続き

まず一番に挙げられるのは時間の短縮です。行政に聞けば答えてくれるとはいえ、その書類作成は結構複雑で時間がかかります。例えば、個人事業主が社員を雇った場合、以下の手続きが必要です。
・労働保険保険関係成立届
・労働保険概算保険料申告書
・雇用保険適用事業書設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
会社を設立して社会保険に加入するなら
・健康保険・厚生年金保険 新規適用届
・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
窓口は
・労働基準監督署
・ハローワーク
・年金事務所
の3箇所。それぞれ書き方を調べ、提出です。間違っていたら書き直しですし、添付書類が多々あります。
社長自身の時給を考えて、割が合うなら自分で調べて自分で手続するのは当然ありえます。逆に、これらの作業にかかる時間と社労士に支払う報酬を比べて、社労士報酬の方が安ければ社労士に頼んだほうがコストパフォーマンスが良いことになります。社長の時間は有限ですし、社長の時間は無料ではないのです。

雇用環境の整備

上記の手続きが終了したら雇用に関する問題がすべて解決するわけではありません。
そもそも労働条件通知書や雇用契約書が無ければ、どんな労働条件なのかわからず、あとでトラブルの元になります。インターネットでひな形を探せますが、正しい契約書を作ることは非常に難しいです。
今後の問題も残ります。残業が発生しそうなら通称「三六協定」の締結と提出が必要です。また、1日8時間、1週間40時間の事業所ばかりではありません。例えば飲食業ならシフトを組んで勤務させることが多いでしょう。そんな場合は「変形労働制」導入ということになり、これまた協定の締結と提出が必要です。
働き方が決まったら、それに適した出勤簿を作らなければいけません。その会社に適した出勤簿を作成するのは意外に難しいです。でもこれを間違うと正しい勤怠管理ができず、労働に見合った正しい給料計算ができません。
まだまだこれは序の口で「人を雇う」ということは非常に高度な仕事です。繰り返しになりますが、自分で時間をかけるか、専門家に依頼するかの天秤になります。最悪なのは、労働法を無視することです。ブラック企業の誕生です。

社労士に聞くデメリット

行政と違い有料です。また社労士が提供するサービスはほとんどが目に見えません。あったとしても書類だけです。「書類に何万円も払うなんて馬鹿げてる」「アドバイスだけでお金を払うなんて!」と思う方には不向きでしょう。
また、社労士と一言で言っても得意分野はそれぞれ違うので、自分の知りたいことに精通した社労士を見つけるのは難しいかもしれません。「社労士ならみんな同じだから」とネットの見積もりで最安値の社労士と契約すると思ったクオリティと違っていて無駄金になる可能性も否定できません。

本当に聞きたいことは何ですか?

雇用に関する問いの根本は「社長も社員も安心して会社で働けること」と私は考えています。ほとんどの社長も同じ考えだと思います。そのために必要なのは「点」で問題を解決することではなく「線」で問題を解決することです。会社は継続しますし、社員も継続して働きます。安心は点の解決では得られません。線、つまり過去・現在・未来を考えた対策が必要なのです。
社長が聞きたいのは「手続き」だけですか?
それとも「社長と社員の安心・安全」ですか?

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
大阪府中小企業家同友会 三島支部 情報化広報委員長
一般社団法人即戦力 理事
茨木商工会議所専門家相談事業 相談員
大阪府働き方改革推進支援・賃金相談センター 訪問コンサルティング専門家
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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