【社労士が解説】有給休暇の買い取りは認められるのか?

こんにちは、大阪府茨木市「社会保険労務士法人こころ社労士事務所」香川昌彦です。本日は、有給休暇の買い取りと取得に関する重要なポイントについてお話ししたいと思います。中小企業の社長の皆様にとって、従業員の有給休暇の管理は大変な課題です。ここでは、有給休暇の買い取りに関するメリットとデメリット、そして取得に関する重要な論点を考察していきます。

まず、有給休暇の買い取りは原則として認められていません。ただし、以下のようなケースでは例外的に買い取りが可能です。あくまでも「例外的」であることに留意してください。

例外的な買い取りのケース

1. 退職日が決まっており、退職の申出から退職日までの間に有給休暇の残日数分の出勤日がない場合
2. その結果、すべての有給休暇を取得しきれなかった場合

具体例を挙げてみましょう。

– 退職の申出日:7月15日(出勤日はすべて有給休暇を請求)
– 退職予定日:7月31日
– 退職日までの出勤日数:12日
– 有給休暇残日数:20日

この場合、買い取りできるのは「20日 – 12日 = 8日」です。

買い取りの金額やその方法については、企業が自由に決めることができますが、通常の有給休暇1日あたりの金額を下回ることは可能です。また、買い取りの制度については、個別に対応するか、就業規則に記載してルールを明確にするか、どちらでも差し支えありません。個別に対応する際には、買い取る人と買い取らない人を分けることも可能です。

有給休暇取得の重要なポイント

退職届を提出後、すぐに有給休暇の取得の申請があったとしても、企業はこれを拒否することはできません。退職届を提出した従業員が退職日までの間に有給休暇の取得を請求した場合、企業はこれを取得させなければなりません。

ただし、従業員の有給休暇の取得によって事業の正常な運営に支障が出る場合、企業は取得時期の変更が可能です。この場合、変更は退職日までに有給休暇を取得させる必要があり、退職日より後には変更できません。

例えば、業務の引き継ぎのために何日か出勤してもらう必要がある場合は、事前に就業規則で退職時の引き継ぎについてルールを決めておくことが重要です。ルールを守らず出勤しなかった場合は懲戒処分にするなどのペナルティも設定できます。

法的根拠と注意点

昭和30年11月30日の基発4718号では、労働基準法第39条に基づく有給休暇は労働者の健康保持及び生活保障のためのものであり、原則として買い取りは認められないと明記されています。このような法的背景を理解した上で、企業としてどのように対応するかを慎重に検討する必要があります。

また、有給休暇の買い取りは従業員の有給休暇取得を妨げる可能性があるため、注意が必要です。従業員が休暇を取らずに買い取りを期待するようになると、本来の休暇の目的であるリフレッシュや健康管理が損なわれる恐れがあります。よって買い取りは「例外的」であるのです。

結論

退職時の有給休暇の買い取りは、退職が決まっている従業員の引き継ぎや繁忙期などで有給休暇の取得が難しい場合に有効な手段となり得ます。しかし、事前に退職のルール(例えば、有給休暇の申請期限を守っている場合や、業務がひっ迫している場合に買い取るなど)を明確にし、企業と従業員が納得できる形で対応することが重要です。

有給休暇の買い取りを検討する際には、法的な制約や健康管理の重要性を踏まえた上で、バランスの取れた対応を心がけてください。何かご不明な点やご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
大阪府中小企業家同友会 三島支部 情報化広報委員長
茨木商工会議所専門家相談事業 専門家相談員
大阪府働き方改革推進支援・賃金相談センター 訪問コンサルティング専門家
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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