大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。今回は障害者について考えていることを書こうと思います。
中崎町のおむすびやさん
私は「就労移行支援事業所」という、障害者の社会復帰施設を経て社労士として独立しました。独立は令和2年1月1日です。
10数年前、精神疾患で倒れ、自宅療養から再び仕事ができるようになった、その事業所の社長が昨年中崎町にオープンしたおむすび屋さん。
コロナ禍で実習先(社会復帰のための試し労働の場)が激減したため、「だったら自社で実習できるお店を作ろう!」というコンセプトで作られたのです。
きちんと収益が上がるお店
ボランティアで障害者が働けるお店は沢山あります。ただ、善意に支えられていて、市場競争に晒されたとき収益の出るビジネスモデルになっているところは多くはありません。
このお店は市場競争に打ち勝ち、行列もできる繁盛店です。デートスポットでもある中崎町。古民家を改装したオシャレなお店がたくさんあります。
その中で「ちゃんとした普通のお昼ご飯」を「手軽な価格で」を実現したのがこのお店。大きめのお椀に日替わりのお味噌汁、おにぎり2つ、小鉢3つ、デザート1つで800円。
阪急三番街なら1200円くらいの価格でも成功すると思います。
自分の存在に自信が持てる場
誤解ないように説明しますが、障害者から搾取して低価格を維持しているわけではありません。たしかに、ここで働く実習生は労働基準法上の労働者ではないため、最低賃金法の対象外です。
でも得られることは非常に大きいのです。障害者雇用の要は「何ができるか」「何ができないか」を自分で認識し、他者に伝えることです。
就労移行支援事業所と一体になった仕組みにより、安心して自分の個性を知ることができます。
特に「何ができないか」を知ることは重要です。出来ることをアピールすることは大切ですが「ここは苦手です」と説明できることが、雇用主の安心に繋がるからです。
配慮の仕方が分からず障害者雇用に踏み切れない会社は多数あります。この店の実習生は、それを実感し説明することができます。これは今後の人生でかけがいのない財産です。ハンディキャップを受け入れて幸せに暮らすには絶対に必要なのです。
障害者雇用は特別なことではない
就職するために、継続して働くためには、背伸びして自分の能力をPRすることより「何が苦手か」を知ることの方が重要です。これは障害者雇用に限ったことではなく、健常者にも言えることです。
自分は「何ができるんだろう?」と同時に「何が出来ないんだろう?」を理解することが、キャリア形成につながります。
中崎町の小さな、でも繁盛しているおにぎり屋さん。健常者と障害者が交わりながら、それぞれに気づきを得ている場です。福祉やボランティアを乗り越え、商業ベースで本当の意味でのダイバシティを実現させています。
障害者雇用をすることで、他の社員、社長ですら気づくことはたくさんあります。
障害者雇用はボランティアではないと私は考えています。様々な個性のある人が幸せに働くにはどうすればいいのか考える土台になるものなのです。
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