人事評価制度のあり方。給与の分配ではない真の目的

大阪府茨木市「社会保険労務士法人こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
今回は人事評価制度に触れてみようと思います。

人事評価制度導入の目的として挙げられるのは以下のようになります。

人材確保と定着

今はとにかく人手不足です。どの会社も優秀な人材の確保と定着が課題です。入社すればどのようなキャリアパスが待っているのかを示さなければ人材を確保できません。中小企業では資源が限られている中で、採用⇢定着⇢成長を促さなければ会社に成長はないのです。
経営資源には「人・物・金・情報」がありますが、育てなければ得られないのが人です。すべての付加価値は結局のところ人から産み出されます。
そのために透明性が高く公正な人事評価制度が必要なのです。

パフォーマンスの向上

人事評価制度を導入することにより、社員の仕事の質と効率が明確な基準に基づいて評価されます。ブラックボックスになっている「がんばっている」が可視化されるのです。可視化されることにより、何をすべきかが明確となり、個々のパフォーマンスが向上します。
さらに、評価結果をフィードバックとして活用することで、社員は自身の強みと弱みを理解し、継続的な成長を図ることが可能になるのです。

健全な企業文化の形成

「なぜあの人が評価されるのか?」これは、どの会社の社員にも見られる不満です。明確な評価基準があれば、組織内での公平感を高め、社員が信頼関係をもってお互いに協力する企業文化が産まれます。日本の企業は社員が協力してなにかを成し遂げる、というのが強みです(方向性を誤って逆に衰退している企業もありますが)。
協力的でポジティブな企業文化の形成により、その強みを最大限に活かして会社を活性化させることができるのです。

リーダーシップの育成

効果的な人事評価制度の運用に欠かせないのがリーダーシップです。どんなに素晴らしい人事評価制度を導入しても運用できなければ絵に描いた餅となります。鍵となるのが評価者、つまりリーダーの資質です。

人を評価する、というのは非常に難しいことです。上から目線になりがちです。そうでなく、社員をどう育てたいのか、社員自身がどう育ちたいのかを明確にし、そのサポートをすることが必要となります。コーチとしての役割、メンターとしての役割、客観的に分析する役割など、多くの役割がリーダーに求められます。

リーダーがリーダーたるには研修が必須です。それを実行し磨きをかける継続性も必要です。これらを通してリーダ-シップが育ち、企業の今と未来を支えていくことになるのです。

戦略的人材育成

日本では「メンバーシップ雇用」と呼ばれる雇用形態が主流です。これは入社の段階では明確な仕事は決まっておらず、個々の適性や会社の戦略に応じ仕事を決めていくという考え方です。今流行りの「ジョブ型雇用」は特定の仕事に対して採用が行われます。

メンバーシップ型雇用においては社員の成長が企業成長の要となっています。適正な人事評価制度により、社員それぞれの個性を発見し、磨き、必要な研修や能力開発プログラムを導入することによって組織全体の能力向上を図ることができるのです。

まとめ

以上、5つの人事評価制度の効果を挙げました。
ただし成果を上げるためには前提があります。
それは、人事評価制度は給与の配分ではなく人材成長と業績向上を目的とすることです。限られたパイの取り合いになっては社員はさらに不満を抱えます。お互いに疑心暗鬼になります。
他の社員との比較ではなく自分自身がどう成長するかに向き合い、それが会社の業績向上につなげ、結果として会社の業績が向上し、みんなの給与を増やすのが目的なのです。
給与だけでなく、やりがいのある仕事と実感できるようになり、物心両面の豊かさを得られます。

「評価」という言葉に惑わされないのが、人事評価制度成功のカギとなっているのです。
高額な人事評価制度を導入し、それで安心した気分になっていないでしょうか?
目的を誤った人事評価制度は逆に組織を崩壊させてしまうことを社長は知るべきでしょう。

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
大阪府中小企業家同友会 三島支部 情報化広報委員長
一般社団法人即戦力 理事
茨木商工会議所専門家相談事業 相談員
大阪府働き方改革推進支援・賃金相談センター 訪問コンサルティング専門家
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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