こんにちは、大阪府茨木市の「社会保険労務士法人こころ社労士事務所」の香川昌彦です。今回は、「病気の従業員に病院で受診するよう命令できるか?」というテーマについてお話しします。
結論
就業規則に従って受診を命じることが合理的である場合、従業員はその命令に従う義務があります。さらに、就業規則に明確な規定がなくても、労使間の信頼関係や公平性に基づいて適切な理由があれば、受診命令は有効とされることがあります。また、安全配慮義務の観点からも受診命令を発することが求められる場合があります。
「合理的」というのが大きなポイントです。
事例紹介:電電公社帯広局事件
この点を説明するために、「電電公社帯広局事件」を事例として紹介します。
事件の概要
この事件では、頚肩腕症候群の総合精密検診を受診するよう命じられた従業員が、その命令に従わず、問題解決のための団体交渉の場に無断で出席し、職場を離脱したことを理由に戒告処分を受けました。従業員はこの処分の無効を求めて裁判を起こしましたが、最終的に最高裁判所は企業側の主張を認め、処分を有効としました。
判決のポイント
1. 業務命令の根拠
業務命令は、使用者が業務を遂行するために従業員に対して行う指示です。従業員は労働契約に基づき、この業務命令に従う義務があります。
2. 就業規則の役割
就業規則に受診命令の規定が含まれている場合、従業員はその内容を知っているかどうかにかかわらず従う必要があります。合理的な就業規則は労働契約の一部とみなされます。
3. 健康管理の義務
企業は従業員の健康を守るための指示を行う義務があります。これに従わない場合、従業員は懲戒処分の対象となることがあります。
4. 合理的な受診命令
受診命令は従業員の健康回復を目的としており、合理的な理由があれば有効です。この判決では、精密検診の受診命令が合理的であり、従業員がこれを拒否したことが懲戒理由に該当するとされました。
まとめ
この判例は、就業規則に基づく受診命令の有効性を明確に示しています。経営者は、従業員の健康管理を徹底し、安全な労働環境を提供するために、適切な受診命令を発令することが重要です。また、従業員が受診命令に従わない場合、適切な懲戒処分を行うことができます。
この判例を参考に、経営者は従業員の健康管理に関する方針を再確認し、就業規則の整備を進めることが望ましいでしょう。
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