休職社員の問題行動

大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
以前、精神疾患での休職について記事を書きました。

就業規則と休職
休職と休職療養中の行動についてもう少し考えてみます。

具体的には精神疾患で休職中の社員が、旅行や飲み会をしていた場合、療養専念義務に違反しているのか、というテーマです。

医師の判断と会社秩序

精神疾患の治療が服薬だけではない、ということを以前書かせていただきました。

メンタルヘルス不全と認知行動療法
医師が治療の一環として、旅行や趣味(例えば楽器を弾くなど)を勧めることはあり得る話です。旅行については「転地療養」というものがあるくらいです。いわゆる場所を替えての気分転換です。

転地療養(Wikipediaより)
ただし医師の判断に従わせることと、会社秩序の観点から注意指導を行うことを両立させる必要があります。本当に医師の判断なのかを検証する必要もあります。

休職中の行動と会社秩序

会社側は就業規則上、療養専念義務を説明する必要があります。さらには会社が必要と認めた場合は主治医からの意見聴取、指定医等への受診、逸脱行動の可否を会社の許可制としておく必要があります

休職中に旅行や飲み会などの趣味を楽しむことは、精神的な回復をもたらすことがあります。ただし、以下のような行動を取った場合どうなるでしょうか?

  • 旅行をすること
  • 飲酒や会合への出席を行うこと
  • パチンコ店に出かけること

他の社員は「あれ?」となるのではないでしょうか。
さらには

旅行の写真をSNSにアップしたら社員はどう思うでしょうか?
飲み会の写真をSNSにアップしたらどうでしょうか?
パチンコ店に出入りするのを見たらどうでしょうか?

就業規則の重要な役割として社内秩序を守るということが挙げられます。
たとえ医師からOKが出ていても、その言動が社内秩序を乱すものであるのなら会社が制限を加える必要があります。許可制としているのは、精神疾患の治療は服薬だけではありませんが、一般的には服薬と休息という理解なので、それ以外の行動は事前に会社に知らせてほしいという意味合いです。

就業規則と会社秩序

就業規則には懲戒規定や服務規律という項目があります。条文に「その他社内秩序を乱す行為をしてはならない」などの条文が一般的にはあるかと思います。これをもって前述の行動が服務規律違反だったり懲戒対象としたりすることは正直難しいですが、この条文を根拠に社員が休職に入る前「仮に療養の一環としての行動であっても、他の社員から見たらおかしい、という行動は控えてくださいね」と伝えることが必要です。

「休んで遊んでリフレッシュできた!」と復職すれば、おそらく他の社員もいい顔はしません。もちろん申し訳無さそうに復職しなさい、というわけではありませんが、人の感情をわざわざ逆なですることはしないに越したことはありません。
そんな中復職すれば、またストレスがかかって再発し休職するという最悪の事態を招くこととなります。休職する社員も、他の社員も、社長も、誰もが不幸になる結末です。

療養専念義務と医師の判断の確認

療養専念義務の具体的な内容は、社員個人が決めることではなく医師が主体になって決めることです。そもそも飲み会やパチンコは医師が勧めたのでしょうか?素人でも以下のように考えが及びます。

  • 服薬しているはずなのでアルコールはいいの?
  • 気持ちがしんどいって言ってたけど、パチンコでは心が休まるどころか気分の浮き沈みが激しくなるのでは?

おそらく医師の勧めではありません。前述したとおり就業規則の休職の条文に「会社は必要に応じて主治医や会社が指定する医師に意見を聞くことができる」とあれば、その条文を根拠に医師と面談し、実際に勧めたのかどうか確認するべきです。勧めていなければ、療養専念義務から逸脱していることを本人に通告する必要があります。

まとめ

当たり前のことですが、休職をする理由は復職をするためです。復職を前提としていない行動は規制対象となります。会社としては、精神疾患の理解と同時に、復職をいかに円滑に行うかを考える必要があり、休職する社員にも伝える必要がああります。休職は会社と社員の理解があって、初めて意味のあるものとすることができるのです。

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
大阪府中小企業家同友会 三島支部 情報化広報委員長
茨木商工会議所専門家相談事業 専門家相談員
大阪府働き方改革推進支援・賃金相談センター 訪問コンサルティング専門家
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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