大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
今日は「休日」と「休暇」の違いや「月平均所定労働日数」「残業代」「給与計算」についてお話します。計算式が多いですがポイントは最後に説明していますのでご安心ください。
休日と休暇の違い
まず、休日と休暇の違いですが、これらは働く上でとても大切な概念です。簡単に言うと、
- 休日:仕事をしない日
- 休暇:仕事をする義務を免除された日
これだけでは少しわかりにくいので、もう少し説明します。
休日は、週休2日制などで定められた働かない日のことで、土曜日や日曜日や祝日が代表的です。一方、休暇は年次有給休暇や慶弔休暇など、あらかじめ許可を得て働かなくてもよい日のことを指します。
まだまだわかりにくいと思います。
言い換えてみます。
- 休日:もともと仕事をしなくてよい日
- 休暇:もともと仕事をする日だけど仕事をしなくてよい日
休日は、先程の土曜日、日曜日、祝日の場合だと、会社の年間カレンダーで、もともと仕事をしないと定められた日です。
休暇は、年次有給休暇や慶弔休暇の場合、もともとは仕事をする日だけれど、仕事をしなくてよいと会社が認めた日です。
夏季休暇と年末年始休暇
ただし、ここで疑問となるのは夏季休暇や年末年始休暇です。「夏季休暇も年末年始休暇ももともと仕事をしなくてよい日では?」という疑問が生じなす。
この夏季休暇・年末年始休暇、実際には「夏季休日」「年末年始休日」の会社もあります。そんな単語を聞いたことない方も多いと思いますが、この休暇と休日の違いは残業代の計算に影響するのです。
固定給と残業代
残業代に影響するとはどういうことでしょうか?これは固定月給者の場合に当てはまります。たとえば月給30万円の方は毎月の固定給は30万円です。当たり前じゃないかと言われるかもしれませんが、月によって労働日数は変わります。月の暦日は28日・29日・30日・31日とありますよね。完全週休2日制の会社をイメージしてもらえばよいかと思います。明らかに労働日数が変わります。
では1日あたりの給与はいくらになるか気になりませんか?残業代計算の基礎となる1時間あたりの給与はどのように計算するのでしょうか?
ここで年間休日数が関係してくるのです。逆から言うと年間労働日数です。
月平均所定労働日数と残業代
実際の月間労働日数は月によって異なることをお話しました。このまま日給を計算すると月によって日給の単価が変わってしまいます。
たとえば3月の実労働日数が22日、4月の実労働日数が20日とします。この会社の1日の所定労働時間は8時間とします。
日給、時給をそのまま計算すると以下のようになります。
- 3月:日給・・・30万円÷22日≒13,636円
時給・・・13,636円÷8時間≒1,705円 - 4月:日給・・・30万円÷20日≒15,000円
時給・・・15,000円÷8時間=1,875円
3月と4月で時給が170円も違います。これではおかしいということで固定給の月給者には年間労働日数から計算される月平均所定労働日数を使います。月平均所定労働日数を1日の所定労働時間で割ると時給が計算されます。これが残業代計算のベースとなります。
残業代と年間休日
一体何の話をしているの?休日と休暇の違いの話では?と思った方もいらっしゃるでしょう。
年間休日から年間労働日数が計算されると説明しました。
この年間休日に休日は含まれ、休暇は含めません。なぜならもともと休みの日が休日で仕事をする日だけど休んでよい日が休暇だからです。よって有給休暇や慶弔休暇は年間休日に入りません。
ここで夏季休暇や年末年始休暇の話に戻ります。休暇なので年間休日に入りません。ところがこれを休日として扱う会社もあるのです。あるいは年間休日に含める形で社内外に公表しているけれども、実際には休暇として扱っている会社もあります。
この違いが残業代に影響します。例を出して説明します。
- A社:土日祝が休日 年間休日118日(夏季休暇3日 年末年始休暇5日は含まない) 年間労働日数247日
- B社:土日祝が休日 年間休日129日(夏季休日3日、年末年始休日5日を含む)年間労働日数239日
平均月間所定労働日数は以下のとおりです。
- A社:247日÷12ヶ月≒20日(小数点以下切り捨て)
- B社:239日÷12ヶ月≒19日(小数点以下切り捨て)
月平均所定労働日数に1日の差が出ました。
ここで、A社の月給30万円の方とB社の月給30万円の方の時給を計算します。
1日の所定労働時間は8時間とします。
- A社:30万円÷20日÷8時間=1,875円
- B社:30万円÷19日÷8時間≒1,974円
B社のほうが、99円時給が高くなりました。残業代単価のベースとなるので残業代にも差が出ます。
ややこしい計算式をたくさん出しましたが、同じ月給なら年間休日が多い方が時給単価は高くなり残業代単価が高くなるということです。夏季と年末年始を休暇とするのと休日扱いするとでは、時給単価が変わるのです。
まとめ~休日・休暇と残業代~
長々と説明しましたが、給与計算では月平均所定労働日数の設定が必須にあるということだけは押さえましょう。理由は説明した通りで残業代の単価を設定しなければならないからです。なんとなく20日や21日で計算するのは明らかに間違っています。賃金未払いのリスクを負うこととなります。
休日と休暇。1文字しか違いませんが内容に大きな差があることを理解いただけたかと思います。実際にはシフト制休日の会社も多いので、計算はもっと複雑になります。休日・休暇と給与は密接に関係しているのです。
自社の給与計算が不安になった方も多いかと思います。そのような場合は休日・休暇も含めた労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談ください。給与計算の誤りが労使トラブルの一番の原因なのです。
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