大阪府茨木市の社会保険労務士法人こころ社労士事務所です。
近年、スキマバイトやスポットワークと呼ばれる短期間・単発の雇用形態が注目を集めています。
この働き方は、労働者にとって時間や場所にとらわれない柔軟性を提供し、企業側にも急な人手不足を補う手段として役立ちます。
しかし、従来の雇用形態とは異なる点も多く、雇用主として注意すべき点がいくつか存在します。
スキマバイト・スポットワークとは?
スキマバイトは、短期間・単発の雇用契約の下で業務を行う働き方です。
一日単位での業務が主で、通常のパートタイムとは異なり、社会保険や所得税の取り扱いも異なる点が特徴です。
就業形態 | 雇用契約 | 契約期間 | 指揮命令 | 給与形態 | 保険加入 |
正社員 | 無期限 | 無期限 | 可 | 月給・年俸 | 雇用保険・社会保険加入 |
パートタイマー | 雇用契約 | 1か月〜3年 | 可 | 時給 | 条件を満たせば加入 |
スキマバイト | 雇用契約 | 1日〜数週間 | 可 | 時給(日払い可) | 条件を満たせば加入 |
業務委託型スポットワーカー | 請負契約・準委任契約 | 自由 | 不可 | 成果報酬 | 自己加入 |
派遣社員 | 雇用契約 | 1か月〜3年または無期限 | 可 | 月給・時給 | 条件を満たせば加入 |
スキマバイト雇用の際に注意すべきポイント
スキマバイトを活用する際には、いくつかの労務管理上の注意点があります。
以下のポイントをしっかり押さえることで、企業と働く人双方にとって安心して働ける環境を整えることができます。
- 1. 労働条件の明示
労働契約(雇用契約)の締結は義務ではありませんが、労働条件を書面で提示することは義務になります。
賃金や労働時間などの労働条件を明示することでトラブル防止にもつながります。
・労働契約の期間
・就業の場所及び従事すべき業務
・始業・終業時刻、休憩時間、休日
・賃金、昇給、退職手当 など - 2. 労災保険の手続き
スキマバイトも労働者に該当するため、労災保険の適用対象です。
スキマバイトは継続的に雇用されていない方が多く依頼した業務に不慣れな場合があります。
労災事故を防ぐため、職場のルール作りや業務の見直しが重要です。 - 3. 安全衛生教育の実施
スキマバイトを雇用する場合、事業者は雇い入れ時に必ず安全衛生教育を行う必要があります。
必要な教育を怠った場合、労働安全衛生法違反となりリスクを伴います。
・機械や原材料の危険性、有害性に関する取り扱い
・作業手順、安全装置の使用方法
・整理整頓の重要性
・応急措置や退避方法 など - 4. 労働時間の適正な把握
企業には、スキマバイトの労働時間を正確に把握する義務があります。
例えば、業務に必要な研修や、制服への着替え時間も労働時間に含まれるため、注意が必要です。
<労働時間の適正な把握のために会社が行わなければならないこと>
・労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を適正に記録する:勤怠ソフトなど、客観的な記録で管理
・賃金台帳の適正な調整:労働日数や時間、時間外労働時間などの事項を適正に記入 - 5. 適正な賃金の支払い
スキマバイトであっても、最低賃金や割増賃金の支払いは必須です。
特に、週40時間を超える場合や22時以降の深夜勤務では、割増賃金の支払いが必要です。 - 6. その他の注意点
<各種保険加入の義務>
所定労働時間が週20時間以上となった場合、雇用保険加入義務が発生します。今後、週所定労働時間10時間以上から雇用保険加入となることが予定されているので、注意が必要です。
<税区分の確認>
一般的にスキマバイトの税区分は丙欄又は乙欄となります。ただし、継続雇用となった場合、扶養控除等(異動)申告書を提出してもらい、甲欄を適用させることになります。
<就業規則の用意>
スキマバイトであったとしても、労働者であることに違いはありません。適用させる就業規則をきちんと作成し、その就業規則を周知する必要があります。
おわりに
スキマバイトの活用は、企業にとっても労働者にとっても有用な働き方です。
しかし、適切な労務管理を行わないと、トラブルに発展する可能性があります。
労働条件の明示や賃金の適正支払い、安全衛生教育の徹底を心がけ、健全な雇用関係を築くことが重要です。
コメント
COMMENT