大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
メンタルヘルス不全で休職するされる方は年々増加しています。企業の人事担当者としては、どうにかして回復して復職してほしいのですが、精神疾患の治療についてはあまり詳しくなかったりします。
病院にかかり薬を処方してもらうというのはイメージできても、それ以外の治療法は知らない方も多いのではないでしょうか?
精神疾患は投薬だけで治癒する疾患ではありません。発症のトリガーはストレスであることが多いですが、ストレスの感じ方が発症したり再発したりする原因のひとつでもあります。ストレスの感じ方を変化させるきっかけとしての認知行動療法と呼ばれる治療法を簡単に説明します。
認知行動療法とは
認知行動療法とは、物事の受け取り方や考え方(認知)や行動に働きかけて、ストレスを軽減する心理療法の一種です。認知行動療法は、うつ病などのメンタルヘルス不全の治療において効果があるとされています。
認知行動療法で得られるものは、自分の考え方や行動を変えることで、気分や感情を改善することです。認知行動療法では、自分が置かれている状況を主観的に判断していることに気づき、その判断が現実と食い違っている場合には、現実にそった見方に変える練習をします。これによって、自分の問題を解決する力や人間関係を改善する力を高めることができます。
認知行動療法の方法は、以下のようなステップで行われます。
- 自身のストレスに気付いて、問題を整理する
- その問題がどのような状況で起き、どのような感情を引きおこしているか整理する
- 自動思考と呼ばれる、気持ちが大きく動揺したりつらくなったりした時に頭に浮かんでいた考えに目を向けて、それがどの程度、現実と食い違っているかを検証する
- 自動思考の特徴的なくせに気付く
- 自動思考と現実とのズレに注目して、現実にそった見方に変える練習を行う
- 問題を解決する方法や人間関係を改善する方法の練習を行う
自動思考をもう少し詳しく説明します。
自動思考とは、体験する出来事に対して反射的に生じる考えやイメージのことです。例えば、「友人に送ったメールの返信がこない」というときに「友人は私のことを嫌っているのだろう」と思うのが自動思考です。「既読スルー」で落ち込んだりすることがありますよね。
自動思考は、自分の感情や行動に大きな影響を与えます。自動思考がネガティブな場合は、自分の気分や自信を下げたり、問題を解決する意欲や能力を低下させたりするのです。
自動思考は、自分の意志とは関係なく自動的に湧き出るので、気づきにくいことがあります。しかし、自動思考は必ずしも現実に沿ったものではありません。自動思考には、特徴的なくせや歪みがあることが多く、それらを検証することで、より現実にそった見方に変えることができます。
こころと身体へのアプローチ
しかしながら、認知行動療法だけでも足りないものがあります。 それは「こころと身体」へのアプローチです。 一旦不快な思いをしたり、ストレスを感じたりしたときに、認知行動療法的な考えで落ち着いても、こころと身体のストレスは納まってはいません。 これを放置すると、結局ストレスをため込んでしまうのです。
少し難しい書き方をすれば、交感神経が優位になっているのを、副交感神経を優位にして、落ちつく必要があるのです。
たとえば、会社で一番簡単なのは、トイレの個室で目をつぶって深呼吸を数分。 腹式呼吸が出来る方なら、胃がグルグル鳴ってくるほど落ち着きます。 ヨガを少しご存知なら、呼吸に合わせて、上半身だけヨガ。 ヨガを知らないなら、ストレッチでもいいです。 身体へのアプローチが高まります。 すぐには効果が感じられないかもしれませんが、呼吸と副交感神経は密接につながっているので、こころと身体のリラックスに繋がるのです。
頭で論理的にストレスを解消しても、こころと身体は論理では動きません。 しっかりケアしてあげる必要があるのです。
メンタルヘルス不全は服薬・ものごとの捉え方を変える・こころと身体にアプローチすることを組み合わせる形で改善が見られます。もちろん即効性はありませんが、家でずっと寝ているより遥かに効果的です。
人事担当者の精神疾患への理解
企業の人事担当者としては、精神疾患で休職する社員さんには就業規則に基づき「療養専念義務」を伝える必要があります。それとともに「療養専念」とは自宅謹慎をして薬だけを飲んでいることだけではない、という理解が必要なのです。
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