こんにちは。こころ社労士事務所の香川です。
毎年発行される厚生労働白書。今年の令和7年度版では、「次世代の主役となる若者の皆さんへ」という副題のもと、社会保障や労働施策の役割をわかりやすく紹介しています。
一見すると若者向けの白書ですが、実は「若手人材に悩む経営者」にとっても非常に示唆に富んだ内容となっています。今回のブログでは、この白書を手がかりに、「若手が辞めない職場づくり」のヒントを探ってみたいと思います。
若者の“無知”がトラブルの種になる時代
令和7年度版厚生労働白書によると、社会保障制度や労働法に関する若者の理解は、まだまだ十分とは言えません。
例えば、アルバイトで休憩が取れないことに疑問を持ちつつも、「どこに相談すればよいかわからない」「自分が守られているという意識がない」――そういった声が紹介されています。
制度を知らないまま働きはじめることで、若者は不安を抱えたり、トラブルを我慢してしまったり、あるいは不満が爆発して離職してしまうこともあります。
これは、経営側から見れば「もったいない離職」であり、「本来防げたトラブル」です。
制度は“守り”だけでなく“育てる道具”にもなる
社会保障制度や労働施策は、決して「困っている人のため」だけのものではありません。
- 育児や介護の両立支援
- メンタルヘルスやハラスメント防止
- キャリア形成支援や職場内研修の整備
- 社会保険制度や年金の仕組み
これらはすべて、若手の不安を軽減し、安心して働ける土台になります。
厚生労働白書では、これらの制度が「自助・共助・公助」のバランスによって支えられていることを丁寧に説明しています。企業が制度を“理解させる場”を提供することは、若手社員の“社会人としての自立”を支える教育機会にもなるのです。
教育は「学校任せ」から「職場の責任」へ
白書では、学校での社会保障教育や労働法教育の取り組みも紹介されています。とはいえ、すべての若者が十分な知識を得て社会に出てくるわけではありません。
ということは、最初に制度と出会うのは「職場」かもしれません。
企業が行う入社時研修、OJT、定期面談、労務に関する社内通知――こうした場面が、若者にとっての「最初の制度学習の場」になる可能性があります。
ですから、経営者や人事担当者こそ、「制度をどう伝えるか?」という視点が不可欠なのです。
「制度を伝える会社」こそが、選ばれる
「うちの会社はちゃんと制度を守ってくれる」
「何かあれば相談できる雰囲気がある」
「成長と安心のバランスがある」
若手にとって、こうした職場は非常に魅力的です。
目先の給料や休暇日数ももちろん大切ですが、「ここにいて大丈夫」と思える“心理的安全性”が、長く働く理由になります。
実際、白書には若者の視点から見た「制度理解の有無」が、キャリアへの満足度や将来設計の明確さに影響を与えていることが示されています。
制度を“伝えられる会社”は、自然と人が集まり、離職も防げる――これは大企業に限った話ではなく、むしろ中小企業こそ取り組むべき課題です。
「伝える仕組み」をつくる3つの実践ヒント
では、実際に職場でどう制度を伝えるのか?ここでは、白書の内容も参考にしながら、すぐに取り組める3つのヒントを紹介します。
① 入社時研修で「制度の基礎」を伝える
社会保険の仕組み、年金、労働時間、休憩、休暇、相談窓口など、生活と仕事に関わるルールを新人研修に組み込みましょう。簡潔でも「知っている」と「知らない」では大きな違いです。
② 管理職に「伝える責任」を持たせる
職場の上司が「制度の使い方」や「守られる権利」を把握しておくことは、心理的な安心感につながります。制度の説明書を渡すだけでなく、言葉で伝えられる文化をつくることが重要です。
③ 定期的な見直しと対話の場を設ける
白書では「制度は変化するものである」とも指摘されています。制度改正のタイミングに合わせて情報提供を行うこと、また従業員との対話の中で“使いにくさ”や“わかりにくさ”を改善していく姿勢が大切です。
まとめ:制度は“人が辞めない”ための仕組みである
令和7年度版厚生労働白書は、若者向けにやさしく制度を解説しながらも、「制度を伝える責任は職場にもある」というメッセージを私たち経営者に投げかけています。
若手人材が育たない、すぐ辞めてしまう――
その背景には、「制度が知られていない」「活かされていない」職場環境が潜んでいるかもしれません。
だからこそ、「伝える会社」「活かせる会社」になることが、これからの人材戦略における強みになります。
こころ社労士事務所では、制度説明や若手向け研修の導入支援、社内制度の見直しなど、実務的な支援も行っています。
気になる方はぜひ、お気軽にご相談ください。
令和7年度厚生労働省白書はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/25/index.html