大阪府茨木市「社会保険労務士法人こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
「人的資本経営」という言葉を聞いたことがありますか?聞いたことがある方も「人的資本経営って本当にうちみたいな中小企業に関係あるの?」と思われたかもしれません。
実は、規模の大小にかかわらず、企業が成長し、安定した経営を実現するためには、人的資本経営は欠かせません。
たとえば、社員が辞めたら「また採用だ…」とため息をつくことはありませんか?
新しい人を育てるコスト、ベテランが辞めたときのダメージ――これらは人的資本を軽視している企業ほど、大きな問題になります。
ここでは、社労士の視点から「人的資本経営」と「四方良し」の考え方を解説します。
会社が持続的に成長し、社員も笑顔で働ける職場を目指すためのヒントとなればと思います。
人的資本経営とは?
人的資本経営は、企業が社員を「単なる労働力」ではなく、「成長資産」として捉え、教育、育成、働きがいの提供を通じて組織価値を向上させる経営手法です。
人的資本経営の4つのポイントは以下のとおりです。
- 教育と研修の充実:社員がスキルを磨く機会を提供
- 公正な評価と報酬:成果や努力を適切に評価し、報酬に反映
- 働きがいのある職場づくり:社員が誇りを持ち、安心して働ける環境を整える
- キャリアパスの明確化:社員が成長を実感できる仕組みを構築
四方良しの理念と人的資本経営の関係
「四方良し」とは、日本の伝統的な商業哲学で、近江商人が唱えた「売り手良し、買い手良し、世間良し、働き手良し」を指します。
- 売り手良し(企業):企業の利益が確保され、持続的な成長が可能となる。
- 買い手良し(顧客):顧客が満足し、リピート顧客として長期的な関係を築ける。
- 世間良し(地域社会):地域社会に貢献し、信頼を獲得。地元の雇用を支え、社会的信用を高める。
- 働き手良し(社員):社員がやりがいを感じ、成長し続ける環境が整う。
実践例:中小企業での人的資本経営
中小企業の実際の取り組み例を3社紹介します。
株式会社利根川産業(東京都足立区)
- 廃棄物収集・リサイクル業(社員数:114名)
- 社員との信頼関係構築、リーダー育成、新たな人材採用手法を導入
- 結果:社員の定着率向上と企業の成長に寄与
- 社労士の視点:社員との信頼構築は離職率低下に直結します。中小企業では特に、経営者自身が現場を理解し、率先して信頼関係を築くことが重要です。
- 参照元:tokyo-kosha.or.jp
島田電機製作所(東京都)
- 製造業
- 企業文化の醸成、コミュニケーション促進、1on1ミーティング導入
- 結果:社員満足度とエンゲージメント向上
- 社労士の視点:社員の声を直接聴き、フィードバックを取り入れることはエンゲージメント向上につながります。1on1ミーティングはシンプルながら効果的です。
- 参照元:metamentor.tech
岩田商事株式会社(大分県)
- ガソリンスタンド経営(社員数:52名)
- 社員主導の人事評価制度を導入
- 結果:責任感と自主性向上、業績維持・向上
- 社労士の視点:社員が自ら目標を設定し評価される仕組みは、モチベーションを高めます。評価制度は一方的ではなく、社員の意見を反映することが重要です。
- 参照元:chusho.meti.go.jp
まとめ
人的資本経営は「特別な大企業だけの話」ではありません。中小企業こそ、社員一人ひとりの力が企業全体の成長を支える重要な存在です。
「四方良し」の理念を取り入れることで、顧客にも社員にも喜ばれる企業づくりが可能です。
まずは「教育制度の整備」や「評価制度の見直し」から取り組んでみましょう。
社員が成長し、会社も発展する――そんな未来を一緒に目指しませんか?