大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
労働時間の適切な管理は、会社の生産性向上だけでなく、従業員のワークライフバランスの向上、法的リスクの回避にもつながる重要な要素です。
特に中小企業では、リソースが限られている中での管理が難しい一方、しっかりとした管理体制を構築することが、企業全体の効率性を高める大きなポイントとなります。
今回は、労働時間管理の基本とその重要性について解説します。
1. 労働時間の「実態」を正確に把握する
まず、最も重要なことは従業員の実際の労働時間を正確に把握することです。
これには、タイムカードや勤怠管理システムの活用が必須です。
しかし、単にタイムカードで記録された時間を確認するだけでは不十分です。
近年、労働基準監督署は、パソコンのログデータなどを用いて実際の労働時間を確認する傾向にあります。
そのため、出勤・退勤時間がシステム上で適切に記録されているか、また実態と乖離がないかを常にチェックすることが求められます。
もし乖離が見られた場合は、労働時間の実態を把握する仕組みを再検討し、改善策を講じましょう。
2.残業管理の徹底
残業時間の管理も労働時間管理の重要な要素です。
残業が発生する場合、事前に上長の承認を得る仕組みを導入することが効果的です。
これにより、残業の必要性を上長が確認することで、不要な残業を抑制できるだけでなく、残業代の適正な支払いも確保できます。
また、残業申請の際には、業務の内容や理由を具体的に記載し、改善策を検討するフォーマットを活用することで、労働時間の無駄を削減できます。
3.長時間労働の抑制策
労働基準法では、残業時間の上限が厳しく規制されています。
特に中小企業でも、2020年4月から残業時間の上限規制が適用されており、法定時間外労働は月45時間、年360時間が原則です。
これを超える残業が発生する場合は、36協定の特別条項を締結する必要があります。
長時間労働を抑制するための施策としては、ノー残業デーや早朝出勤の奨励、残業許可制の導入が挙げられます。
特に、残業の許可制を厳格に運用することで、許可されていない残業には賃金が支払われないため、残業抑制の効果が期待できます。
4.効率的な報告体制の構築
労働時間管理が現場で適切に行われたら、次はその情報を経営陣に適切に報告する仕組みを構築しましょう。
経営陣に労働時間の実態を数字で報告することで、残業時間が多い部署や休日出勤の傾向などを把握しやすくなり、適切な対策を講じることができます。
報告の際には、残業時間の推移や部署ごとの残業時間、休日出勤の理由を集計し、経営陣に提供することが重要です。
定期的な報告を行うことで、長時間労働の防止や効率的な労働時間管理が促進されます。
5.労働時間の短縮と生産性向上
単に労働時間を短縮するだけでなく、同時に生産性を向上させるための取り組みも必要です。
例えば、労働時間を削減するために業務効率化の施策を導入し、生産性向上と労働時間の短縮を同時に実現する方法があります。
具体的には、業務の棚卸しや集中時間の設定、整理整頓の徹底といった施策が効果的です。
また、役職者の評価基準に業務効率化を組み込むことで、管理職層が部門全体の生産性向上に積極的に関与できる仕組みを作ることも有効です。
評価基準を時間当たり生産性に変更することで、限られた時間内での成果を意識した働き方が促進されます。
6.未払い残業代のリスク回避
未払い残業代は、企業にとって大きな法的リスクを抱える要因となり得ます。
実際の労働時間を把握せず、隠れ残業が発生している場合、未払い残業代として後から請求される可能性があります。
そのため、労働時間を正確に管理し、法定基準を満たした残業代を支払う体制を整えることが重要です。
また、通勤手当や家族手当、住宅手当など、各種手当が残業代の計算基礎に含まれているかどうかも確認する必要があります。
手当が適切に計算基礎に組み込まれていない場合、未払いが発生するリスクがあるため、注意が必要です。
まとめ
中小企業において、労働時間の適切な管理は従業員の働きやすさを向上させるだけでなく、法的リスクを避け、企業全体の生産性を向上させる鍵となります。
労働時間の実態を正確に把握し、長時間労働を抑制するための対策を講じることで、健全な労働環境を構築しましょう。
従業員が安心して働ける環境作りこそが、企業の持続的な成長に寄与します。
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