公平な人事評価制度の罠

大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。

今回は人事評価制度に制度について考えたいと思います。

真面目な社長は公平な人事評価制度を求める

社員を複数雇っていると、いろんな差が出てきます。それは成果、能力、やる気、協調性等様々です。
そこを比べて「この社員はこれくらい昇給させよう」「この社員はこれくらいかな」と社長は給料を決めるわけです。それが明文化、ルール化されていないと所謂「鉛筆なめなめ」評価になると一般的には言われています。

この「鉛筆なめなめ」ではいけない!ということで、真面目な社長ほど「公平な人事評価制度を作らなければ!」と考えるわけですが、この「公平」な評価基準って実はものすごく難しいのです。

人事評価を数字だけでできるか?

評価項目にもいろいろあります。「やる気」とか「礼儀正しさ」等。これらは数字で図りようがないので「定性評価」といいます。

営業売上なんかだと、数字に現れるので、こちらは「定量評価」といわれます。
で、一見公平な判断ができそうな、定量評価の「営業売上」で考えてみます。

例えば「わが社は実力主義の売上額で営業部は営業数字で評価する!」と決めたとします。
では、どうやって?

Aさん:売上1000万円
Bさん:売上500万円
Cさん:売上200万円

「よし、Aさんが一番上の評価でCさんが最低評価だ!」となるでしょうか?

Aさん担当エリアの市場規模:1億円
Bさん担当エリアの市場規模:2000万円
Cさん担当エリアの市場規模:1000万円
だと、シェア率を考えると
Aさん:10%
Bさん:25%
Cさん:20%
となります。
「よし、Bさんが一番上でAさんが最低評価だ!」でしょうか?

前年の売上
Aさん:1000万円
Bさん:400万円
Cさん:100万円
でした。

対前年売上アップ率
Aさん:0%
Bさん:20%
Cさん:100%
「よし、Cさんが一番!」

売上アップ金額
Aさん:0円
Bさん:100万円
Cさん:100万円
「Aさんが一番下!」

で、どうしますか?
それぞれの項目にウェイトをつけて掛け算をして足し算をして割り算をして数値を出し、評価をしている会社も多いかと思います。でも、その数値は社員はおろか社長にも意味不明だったりします。

大切なのは社員の納得性と成長

Aさん、Bさん、Cさんはこの評価に納得するでしょうか?たぶんしないと思います。
「こんなに頑張ったのに・・・」「社長は現場をわかっていない」「新規開拓が反映されてない」等、ネガティブな反応が予想されます。

一見評価が簡単そうな営業売上でさえ、こんなことになるのです。これが内勤部門が入ればどうなるでしょうか?定性評価を加えて、そのコンビネーションで・・・としますか?

ちょっと待ってください。原点に戻りましょう。「公平な人事考課制度」は目的ではなく手段です。では目的はなんでしょうか?それは「社員の納得性と今後の成長」です。突き詰めると「業績向上」です。これにつながらない人事考課制度はどれだけ公平であろうが、平等であろうが、科学的であろうが大失敗なのです。

原点は「社員目線」です。「鉛筆なめなめ」の話を最初にしましたが、この会社(Aさん、Bさん、Cさんの3人)ではそのほうが良かったかもしれません。社長の目がくまなく届く企業規模なら、それぞれの社員のことを社長は総合的によくわかっているからです。

社長が評価する社員=一番給料が上がる社員という極めてシンプルな構図です。
ただし社長の考えが社員に浸透しておらず、ブラックボックスのままなら社員に不満がでるでしょう。よってこの「鉛筆なめなめ」の納得性を高めるには「私はこのような社員を評価する」という、いわば「えこひいき」の基準をはっきりさせる必要があります

そうすると、社長が思った方向性で社員が頑張り育っていくのです。その代わり、そのとおりにしても数字が上がらないなら、それは社員ではなく、社長が全責任を負う必要があります。

どんな会社にしたいか、どんな社員を育てたいか

「鉛筆なめなめ」⇢「数値を使ったややこしい人事考課制度」で失敗する企業はものすごく多いです。過去私が勤めた会社でも、外資系コンサルティング会社に何百万円もの費用をかけて完全無欠な人事考課制度を導入しましたが、「誰も理解できない人事評価制度」となり大失敗。挙げ句の果てに、その会社は倒産してしまいました。

鉛筆なめなめから、社長の考え、特に経営理念を可視化、具体化してその方向に沿って人事考課制度を組み立てていく、というのが中小零細企業にとっては一番しっくりくると私は考えています。

無理やり公平さを追い求める必要はありません。繰り返しになりますが、公平は手段でしかありません。「社員の納得性と成長」が人事考課制度の肝であるからです。結果的に公平になります。

社員を大切にすることを置き去りにした「公平な」人事評価制度を作ろうとしていませんか?

 

香川 昌彦

香川 昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表
全国社会保険労務士連合会(登録番号第27190133号)
大阪府社会保険労務士会(会員番号第22072号)
大阪府中小企業家同友会 三島支部 情報化広報委員長
茨木商工会議所専門家相談事業 専門家相談員
大阪府働き方改革推進支援・賃金相談センター 訪問コンサルティング専門家
関西圏雇用労働相談センター 労働相談員

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