大阪府茨木市「こころ社労士事務所」の香川昌彦です。
就業規則に「休職」が定められている会社があります。
私傷病で労務不能の場合に、無給(大企業ではある程度給料が出るところもある)で、会社を一定の期間休んでもいいこともある、という趣旨です。
これは、実は「労働基準法」に定められている、労働者の当然の権利ではありません。
休職の性質
休職は会社が「過去の労働の恩恵に報いる」という意味での、福利厚生的な要素が強いです。
法的解釈をすれば「解雇の猶予」。
私傷病で労務不能の場合、自然退職、あるいは解雇になるのを「回復するのを前提として」一定の治療期間を見る、というものです。
よって就業規則の休職要件によっては、診断書を出したら当然に休職できるというものではなく産業医、あるいは会社の指定する専門医の総合判断によって、休職させるかどうか決める、という場合もあります。
つまり休職は労働者が請求するものではなく、会社が命じるものなのです。
休職期間の社員の問題行動
休職した社員が問題行動をおこしておりどうすればよいか、という相談を受けることあります。
適応障害やうつ病が圧倒的に多いメンタルヘルス不全を例に挙げます。
- 休職期間中に日本全国に旅行に行って楽しんでいる。(Instagramにアップされていたと他の社員からの情報等で知る)
- 面談に全く協力的でなく、回復しているかどうか不明で、ギリギリまで休職期間を満了しようとしている。
- 適応障害やうつ病に対する理解を会社側に過剰に求める。
3つ挙げましたが、
- 自分は「病気」なんだから、休職出来るのが当然で
- 国内旅行は「治療」の一環で
- 休職期間はギリギリまで休まなければ損で
- 会社はメンタルヘルス不全から回復してきた人を受け入れる万全の態勢を作るのが当然。
という心理を持っている方が、残念ながら少数いるのです。
会社側としては
- 働く気があるのか?
- その人の抜けた穴を他の社員が埋めているという自覚はあるのか?
ということをどうしても考えてしまいます。
就業規則周知の重要性
労働基準法や就業規則の解釈ではこのケースで解雇するのは難しいです。解雇無効の判例もあります。
でも、その社員は今後その会社で心地よく働くことができるでしょうか?
会社はその社員に仕事を任せたり、教育研修をして人材開発を図ったりすることができるでしょうか?
会社にとっても休職した社員にとって不幸になるのではないでしょうか?
就業規則の「休職」の条文の内容を、会社は社員にキチンと伝えなければなりません。休職の要件、治療専念義務、報告義務、復職の要件等です。そのためには会社が就業規則の意味をわかっていなければどうしようもありません。労働基準法上の就業規則に関する義務は作成と周知であるのにも関わらず、作成して安心している会社も少なくありません。
社員に休職を命じる場合に、あらかじめその社員に就業規則の休職と復職の条項をきちんと説明しておくことが大切です。「周知」とはそういう意味なのです。
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